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『今日仕事辞めてきたから』
この一言で一家の人生が一転した。
結婚してまだ一年弱。
『もうすぐ結婚一周年記念だね。』そんな話をしていた昨日が懐かしいようにも感じていた。
お腹には新たな命を授かり、幸せな日々を送っていたのに。
なぜ急にこんな事になったのだろうか。
彼女の頭は真っ白だった。
『お仕事、お疲れ様でしたね』
少し引きつった笑顔でこの言葉を発するのに精一杯だった。
気を抜けば自分がどうにかなりそうで。
仕事をしている彼に恋をして結婚したのではない。
彼そのもの、彼自身に恋をして彼女は彼と結婚した。
永遠に愛し、永遠にあなたと共に人生を歩みます・・・
プロポーズをされた時、そう誓った。
出産の為に短く切った髪の毛。
とうぶん美容院に行かなくて良いように耳の上まで短くした。
こんなに短い髪型は高校時代以来だろう。
ふっくらした体系で、お腹も少し大きくなっている。
もう周りから見ても妊娠していると気が付いてもらえるほど大きくなった。
申し訳なさそうに立ち尽くす主人を彼女はゆっくりと抱き寄せた。
『少しゆっくり休みましょうね』
そう言いながらしっかりと彼を抱きしめたのだった。
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