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~プロローグ~
少女は、とうとうその場所にたどり着いた。
服はボロボロで、もはや帰ったら捨てる意外にはありえない状態だったが、残しておくのもありかもしれないと彼女は思う。
それほど彼女にとって、今日という日は記念だった。
光るコケがうっすら生えた洞窟。 地面には動物の骸骨が足の踏み場もないほど落ちている。
自分がひどく小さな生き物に思えるほど広く、形はまさにドーム。
しかし天井部分に巨大な穴があいていて、西日の光が差し込んでいる。
遺骸を指を振るだけではじき飛ばしながら、彼女はその中心へと進む。
柔らかい土で作られた鳥の巣のようなものの中に、両手で抱えるほどの大きなタマゴが見えた。
白に赤い線がところどころ走った、なんとも不思議な模様をしている。
それを彼女はなんとか持ち上げ、うっとりとした表情で頬をよせる。
温かく、ときどき鼓動を感じるので、はっきり生きていると分かる。
――やっと見つけた……! これで……私も彼と同じ……。
そのとき、何人もの人間の足音が聞こえた。
「やっと手に入れたのに……でも……!」
周りを見渡す。 来た道を戻る意外に出口はありそうにない。
かといって、このままおとなしく捕まるつもりは毛頭ない。
少女はため息をつき、苛立ちを隠せない表情で呟く。
「仕方ないわね……。 使いたくはなかったけど……」
舌打ちをして、彼女は胸ポケットに入れた秘密兵器を取り出そうとする。
「いたぞ!!!」
追っ手が彼女を指さした。 彼女はちょうど目的の物を取り出す。
それは一枚の紙きれ。 しかし少女が指で挟むと、それはボンヤリと輝く。
光の円が少女の手前に現れた。 中は煌々としていてよく見えないが、ここにあるはずのない風景がぼんやりと映っている。
それは、誰でも一度は憧れた、「ど○でもドア」という奴かもしれない。
とにかく彼女はそこに飛び込んだ。
――これで逃げきった!
そのとき一発の弾丸のようなものが、彼女の腕を捉えた。
本物の弾丸ではないが、それは少女の腕にあるタマゴを落とさせるには十分な威力だった。
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