序章

3/3
前へ
/14ページ
次へ
1867年(慶応三)11月15日 ある一人の男の死が時代を動かし始めた。 坂本龍馬暗殺― これは簡単に言えば幕府という名の眠れる獅子に向けられていた銃の安全装置が吹っ飛ばされたようなものである。 坂本龍馬は言わずと知れた幕末の有名志士である。 薩長同盟を成し、大政奉還を実現させた立役者で、日本初の会社である海援隊の隊長。 皆さんの知っている龍馬はこんなイメージであろうか。 しかし、暗殺によって歴史の闇へと落ちてしまったが、龍馬はもう一つ特筆すべきことを成し遂げようとしていた。 新政府の枠組みを作ることである。 大政奉還前後、龍馬は新政府の要職の名簿を作っている。 そしてこの中に『参議・徳川慶喜』の文字が入っている。 これは新政府側の人間としては驚愕すべきことであった。 倒幕に最も寄与した人物のうちの一人でありながら、旧幕府を新政府に参画させようとしているのであった。 当然ながら、西郷や大久保、木戸ら他の有力者たちは討幕(=幕府を討滅する)の考えを持っていた。 それであるのに同じく倒幕の立役者である龍馬が旧幕府を庇う―これでは討幕に踏みきれない。 そんなおりに龍馬が暗殺され、戊辰戦争へと踏み切れた。 上手い話だとは思いませんか? 自ら龍馬暗殺の下手人と名乗り出た元京都見廻組・今井信郎の再就職を西郷が手助けした― 裏がありそうではないですか? ここの龍馬暗殺の部分は読者の皆さんが自分で調べると良いでしょう。様々な説があって面白いですよ。 さて、安全装置が無くなった銃は、弾を放つのを待つのみとなった。 その銃が旧幕府という獅子の息の根を止めるまでを描くのがこの小説。かなり不定期になるとは思いますが、よろしくお願いします。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加