夕陽を見に

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ことりとコーヒーカップを机に置く。駅前のどこにでもあるような喫茶店の入口の戸が開いたからだ。さっきから僕はある友人を待っていた。年に数回会うくらいの友人だ。待ち合わせに少々早めに着いてしまった僕は、先にコーヒーを注文して、それを啜りながら、その入口の鐘が鳴る度に視線をそっちへ向けては、まだかなどと心で零していたのだ。 「ごめん、お待たせ」 前会った時よりは幾分か落ち着いた色のショートカットの髪の女の子が目の前に座った。服装もだいぶ清楚な感じにまとめてきている。 「なんか会う度に変わるよな、お前」 皮肉交じりにそんなことを言ってみる。彼女は少し苦笑いしながら答える。 「またそんなこと言ってからかう。そんなんじゃ彼女できないよ」 上着を脱ぎ、眉を釣り上げながら、笑った。上着は丸めて横へ置く。相変わらず横着だ。 彼女の名前は園田早紀。小学校五年生の時に引っ越してきてから腐れ縁が続いている。僕たちの仲が始まったきっかけは何だったかなと少し思い出してみるが、焼かれたフィルムのような記憶が音声無しで再生されたようなものしか脳が映し出さなかった。 「隼人は変わらないね。黒髪に相変わらずのセンスの服…」 小馬鹿にしたような視線が全身に突き刺さる。確かにチェック柄にチェックの重ね着はダサかったかもしれないが、そんなバカにされる程のセンスの悪さなのか、彼女は口元を緩めっぱなしである。 「入ってきたときにすぐ見つけたけど、話しかけようかどうか迷っちゃったもん」 酷い言われようだ。これじゃあ何となく負けた気がするので一矢報いようと言い返す。 「そんなんだから、お前も彼氏の一人もできねんだよ」
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