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ソレはペットショップのアクリルケースの中で元気良く走り回っていた。
「なんだこれ、すっげー可愛い…!え、ねずみ?何これ?」
くりくりとした目が愛らしい。
今までに無い感動が沸き起こる。
「その子は、ロップイヤーラビットって言って、耳の垂れてるタイプのうさぎさんなんですよー。」
アクリル前から離れない浩二に気づいたのか、優しげな店員が浩二に近づき告げた。
浩二は驚き、思わず声をあげる。
「え、これうさぎなんですか?耳垂れてるのとか初めて見た…」
うさぎは浩二の方に寄ってくると、アクリルケースをぺろぺろと舐める。
大変可愛らしい。
鼻がひたすらヒクヒクしているその姿は、小学校時代に見た飼育小屋のやる気の無いうさぎ達とはかけ離れている。
「抱っこしてみますか?この子、かなり人懐っこいんで抱っこも好きなんですよ。」
「え、良いんですか?」
「はい、普通はうさぎって抱っこ嫌いな子が多いんですけど、この子は本当大人しいし。」
浩二は人生で初めて、うさぎを抱いた。
思わず自分の太い腕で潰してやしまわないかと思うほどの軽さだ。
毛並みはふわふわとしていて、体温は高い。
顔を覗き込んでみるとくりくりとした目と視線が合い、うさぎは浩二の顎を必死にぺろぺろと舐め始めた。
かわいすぎる、こんな生き物が地球上に居たのか。
ゆっくり頭を撫でると、目を細めさせ気持ち良さそうにする。
もし。
これが、仕事から疲れて帰ってきて、家に居たら。
ただいま、と言うと寄ってきたら。
寒い冬には、抱いて暖を取るなんてことができてしまったら。
「うさぎは鳴かないですし、わりと一人暮らしの方でも飼っている方多いんですよー。」
気づいたら、うさぎを買うのに必要なケージや食べ物、飼育本、そして腕の中のうさぎを買っていた。
とりあえず、ケージを組み立ててやり早速うさぎをケージに離す。
匂いを嗅ぐような仕草をしてから、隅の方に落ち着いた。
丸くなっている姿はまるで大福のようだ。
大変可愛らしい。何度も言うが、なんとも形容し難い可愛らしさすぎる。
その日はうさぎを尻目にひたすら飼育本を読み、気づいたら眠気に負けていた。
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