プロローグ

2/5
前へ
/217ページ
次へ
ある満月の夜・・・・ 山奥の森の館から深夜の闇に 溶けて消えてしまいそうなぐらい 真っ黒な色をした一匹のコウモリが飛び立ちました。 コウモリが風と踊るようにして 華麗に飛んでいると・・・ 突然、何かを見つけたようにヒラリと舞い、 どこかのベランダに降り立ちました。 そして美形の男の姿になり、閉じている窓に手を添えました。 すると不思議なことに、 まるで何かの力が働いたように 窓にかけてある鍵が外れ、独りでに開いたのです。 そこは女の寝室でした。 男が部屋に入ると、 ベッドで熟睡している女に近づき、 女の寝息を確かめるかのように見つめました。 そして、女が眠っている事を確認した後、 慣れた手付きで女の胸ボタンを外し そっと首元に噛み付き、 ゆっくりと静かに女の生き血を吸い始めました。 血を吸われている女の肌は徐々に赤く染まり、 吐息が漏れて、男の黒い髪を揺らしていました。 しばらくすると、 教会の朝を知らせる鐘が鳴り始めました。 男はその鐘の音を聞くと、スッと獲物から離れ、 女の胸元のボタンを元のように留めました。 そして、自分の口元に付いた血を手で拭うと、 入って来た窓からベランダに出ました。 男は新雪のように白い肌をしていて、 その肌に映える髪は新月の闇のように黒く、 風が通るたび艶やかに光っていました。 漆黒のマントを羽織って、背が高く、 仮面を着けていても分かるぐらい美しい顔をした 若いバンパイアでした。 バンパイアは、マントを翻すとコウモリの姿に戻ると、 まだ明けない夜の空に飛び立って行きました。 バンパイアは、山奥の森の館に戻ると 人間の姿に戻りました。 そして自分の寝室のベッドに入って、 スヤスヤと寝息を立て、 気持ち良さそうに眠りにつきました。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加