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「オートミールって、こんな風にして食べるものなの?」
店主の器が空になるのを待ってからティラミスが尋ねると、「こういう風にも食べられる、というだけですよ」という返事がかえってきた。
「ジャムや牛乳を入れて、甘くして食べるのが普通ですが。お米と同じで、麦の味は本来、それほど強いものではないので、塩味でも食べられます。だからこんな風に、だしやお味噌を入れて、和風にすることもできますよ」
「おかゆにジャムを入れるのって、日本人としては想像できないんだけど……なんかこう」
「まあ、ライスプティングの説明をすると、大抵の日本のかたは固まりますしねえ」
「ライスプティング?」
「お米に、砂糖と牛乳を入れて作るお菓子です」
ティラミスは絶句した後、身震いした。
「うわ。ダメ。そんなのダメ! いや~、想像できない! お米に砂糖って、お米に砂糖って!」
ぎゃー、と叫んでいると、
「おはぎも、お米に砂糖ですよ」
と、店主に言われた。
「え。あ。あああ、……そっか」
言われてみれば、そうである。
「おこしとか、ポン菓子も、お米に砂糖でしょう」
「あ。そう……だね。ああ。ポン菓子はお米でできてた……あー。そうなんだ。
なんかでも、つい、炊きたてのごはんに牛乳と砂糖って考えちゃって……うえってなっちゃって。おかゆは塩味でしょうって」
「先ほども言いましたが、お米自体は味が強くないので、調味料の使い方次第で、甘くも、辛くもできるんですよ。
ただ、人は、長年の自分の習慣で判断してしまいますからね。
何も考えずに食べてみれば、ライスプティングは美味しいものですし。オートミールも、そういうものだと思って食べれば、美味しいです。
自分の持っている常識にとらわれて、そこにあるものを正しく見れないというのは、もったいないですよ。人の持っている常識って案外、狭くて、よそでは通用しないものばかりだったりしますし」
ティラミスは、うーん、とうなった。
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