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会社でパソコンとにらめっこをしていると、同僚のみゆたんが声をかけてきた。
「ティラミス~。明日の夕方、ヒマ?」
「え? 何かあるの?」
「うん、駅の近くにね。新しいレストランができたんだって。イタリアンのお店。わけちゃんと、うとちゃんがね。一度そこで食べてみたいって言ってるの」
「へえ~……あ、でも、ダメだわ」
興味が引かれたが、ティラミスは残念そうに言った。
「明日の夜は、紅さんのお店で貸し切りのパーティーがあるの。あたし、お手伝いを頼まれてて」
そうなのだ。
今朝の食事の後、ちょっと雑談をしていたら、パーティーの話になった。夏至の夜にあったような、外国の人が集まって、食べたり飲んだりする集会が明日、あるらしい。
じんが作っていたあんこは、その時に提供するお菓子になるのだそうだ。
ちょっと人手が足りない、と二人が言っている言葉を聞いて、ティラミスはお手伝いしましょうか、と申し出た。いつも開店前に朝食をごちそうになっているし、こんな時ぐらい、何か手伝いたいと思ったのだ。
「え、例のお店の? うわ~……なんか楽しそう。あたしたちも参加できない?」
みゆたんの言葉に、ティラミスは首をひねった。
「うーん、どうだろ。外国の人ばっかりが集まる、貸し切りパーティーらしいの。会員制みたいな。参加するにもいろいろ、制限がある? みたい」
夏至の夜の出来事を思い出しながら言う。
「外国人ばっかり? 英語ができないとダメかな」
「いや、日本語のうまい人ばかりだったけど……なんだか、怪しげな人もいたよ」
乙女の敵の変質者とか。
「いろんな国の人が集まるから、常識とか、いろいろちがうのね。あたし、前にちょっとのぞいた時にね。スカートが短か過ぎるって怒られたの。普通の服装だったのによ?
それに今回は、お客じゃなくて、裏方のお手伝いするだけだし」
そっかー。残念。とみゆたんは言った。
「ねね、そしたら、イタリアンのお店はまた今度にして。そのパーティーの話、そのときに聞かせて」
「良いよ~。じゃ、わけちゃんたちとも、あとで打ち合わせしよ」
イタリアンのレストランは、相談した後、三日後に改めて行くことになった。何か面白そうな土産話をよろしく! とみゆたん、わけ、うとの三人に言われ、ティラミスは笑ってうなずいた。
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