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「小さい動物だったら殺せるかもしれません。ハエや蚊はもちろん、ゴキブリなら二センチ以下だったら殺したことがありますが、それ以上になると、ちょっと……」 「二センチ以上だったら殺せないのかね。それはどうしてかな?」 「だって、怖いじゃないですか。真っ黒い体で羽をブンブン鳴らして飛んでくることもあるんですから。それを潰したら、グチャ! っていう音が感覚として僕の体に伝わりますよね。あれがどうにも気色悪い……」  恭史郎がそう言った矢先、足元を五センチはあろうかというゴキブリが横切って行った。 「ひぇっ!」  おもわず飛び上がった恭史郎を、晴美が慌てて押さえ付けた。 「我慢するのよ、恭ちゃん!」 「恭ちゃん?」  そんなふうに呼ばれたのは初めてだ。もちろんこの名前だって、いま晴美が命名したばかりなのだ。  恭史郎は何がなんだか分からないまま、パイプ椅子に再び座っていた。 「まあいい、まあいいだろう。――君にもある程度分かっているとは思うが、ここは殺人者たちの集団だ。人を殺すために、日夜訓練しているんだよ」 「は、はい……」
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