後編

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 それからの恭史郎の生活は一変した。初めて持った拳銃、ナイフや日本刀、ましてや機関銃やダイナマイトなど、もちろん他人には見られてはいけないし、殺人の練習なんかできるはずもない。  それでも新人ということもあって、初歩的な殺人の依頼が恭史郎に回されていた。――もちろん殺人に初歩もベテランもないのだが……。  しかし、一人殺し、二人殺し――それが十人目になったとき、恭史郎は恐怖どころか快感さえおぼえて来たのだ。  恭史郎は勉強した。あらゆる本や哲学書、心理学や推理小説の類いも読みあさって、殺人の何たるかを学んだ。――それもすべて、晴美のためなのである。  ――幾日が過ぎて、QGの事務所で久しぶりに晴美に会うことが出来た恭史郎に、思わぬ言葉が耳に飛び込んで来た。 「頑張ってるようだね、恭史郎君! ノルマ達成までもう少しじゃないか!」  会長の感激した言葉だった。百人斬りまであと十人。百人どころか一人も殺せない会員たちばかりなのだ。 「恭ちゃん! もう少しよ、頑張って!」  恭史郎は笑っていた。もう何も怖いことはない。晴美との幸せな日々が始まる寸前なのだ。
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