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恭史郎の顔が歪んでいる。――殺人にはなれてきた恭史郎だが、直らないのが高所恐怖症、そして落下するときのゾクッとする感覚。あの、お尻の穴から内臓が飛び出しそうな感覚がどうしても耐えられないのである。
今まで苦い経験ばかりだ。小学校の遠足で行った遊園地のジェットコースターに乗ったとき、終着点から降りられないのは恭史郎だけだった。それもそのはず、恐怖のあまり漏らしてしまったのはおしっこだけではなかったのだ。それ以来、決してジェットコースターに乗るようなことはなかったのである。
「今やQGのメンバーも若い人たちが多くなっているからね、みんなも喜ぶだろう。ジェットコースターも貸し切りで、みんなで乗る、ってのはどうだ」
会長はまるで童心に帰ったようだ。
「賛成! 私と恭史郎さんは一番前に乗ってもいいかなあ」
「もちろんだとも。君たちが主役だ」
「それとも……やっぱり最後部がいいかなあ。体が浮き上がるようになるでしょ、あれが快感なのよ。楽しみだわあ!」
恭史郎はその会話に参加できない。男としてのメンツ、そして成績優秀な殺し屋として、怖いからやめてくれ、などとは晴美の手前、死んでも言えないのだ。
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