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もちろん恭史郎は、QGの事務所には報告しなかった。その日が過ぎるまで、しばらく自分のマンションに閉じこもろうとしていたのである。
が……。
「おはよう! まだ寝てるの? みんな待ってるわよ、早く行こうよ!」
遠くから聞こえる鶏の鳴き声と共に、晴美の元気な声が、ドアの新聞の差し込み口から響いていた。
ここは返事をしない方がいい。居留守を決め込むんだ。その内あきらめて帰るだろう。
――と思いきや、
「ちょっと、早く起きて!」
いつの間にか晴美が恭史郎の体を揺さぶっていた。
だてや酔狂で殺し屋をやっているわけじゃない。鍵のかかった部屋に入ることなんか朝飯前なのだ。
「今日から一般人なのよ。もう殺さなくていいんだから。安心して起きなさい」
「ご、ごめん。夕べ徹マンで……」
と言い訳しても、万事休す。恭史郎はしぶしぶ起き上がった。もう、行くしかないのである、恐怖のジェットコースターがある遊園地に……。
「――じじい! 本当に動かないんだろうな」
「大丈夫です。場内放送で機械が故障したと言わせますから」
「本当だろうな」
「信用してください。ですから、私の命だけは……」
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