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「もし、妙な動きがあったら、いつでもお前の命は狙えるんだからな」
殺し屋が拳銃をしまい込むのを見て、管理人はその場に座り込んだ。
――ここまで来てしまった以上、晴美の手前怖いとはいえなかった恭史郎は、こうするより他になかったのだ。殺し屋の性として……。
〈電気系統の故障により、すべてのジェットコースターの運行は中止いたします〉
行列の中に戻ろうとした恭史郎は、場内のアナウンスを聞いてニヤリと笑った。
「ちょっと恭ちゃん、何してたのよ。ジェットコースター、動かないんだって」
かれこれ一時間以上も並んでいた晴美が、不服そうな顔で愚痴った。
「何だ、残念だなあ。楽しみにしてたのに」
と言った恭史郎の顔は笑っている。
「誰かのいたずらじゃないのかしら。ジェットコースターに乗るのが怖い、小心者の男とかさ」
恭史郎はギクリとしたが、まだ誰も知らないはずだ。
「う、うん」
「情けないわよね、男のくせに。そんな男って大嫌い!」
声を失った恭史郎だが、相変わらずジェットコースターが動き出す気配はなく安心していた。
と、向こうから会長が走ってくるのが見えた。何やらニコニコ笑っている。
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