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「晴美ちゃん、残念だったなあ」
と、会長が言えば、
「仕方ないですよ。メリーゴーランドにでも乗りましょうか」
と、恭史郎は嬉しそうに言った。
遊園地の案内マップを見ていた晴美が、納得したように頷いて、
「いいものがあるわ、私が案内してあげる」
そう言ってQGグループを導いていった所に、高くそびえ立つアトラクションが存在していた。
恭史郎の顔がしだいに蒼くなってきた。こんなはずじゃなかった。そこはジェットコースターではないため、運行を中止することなく元気に稼動していた。
「さあ、行きましょう! スリルがあって楽しいわよ、きっと!」
恭史郎は忘れていた。ジェットコースターばかりに気をとられ、もっと恐ろしいフリーフォールがここにある事を見逃していたのである。
「ちょ、ちょっと……」
言葉もはっきり出ないまま、恭史郎の体はずるずると引きずられるようにフリーフォールの乗せられていた。
「こ、これもジェットコースターの仲間なんじゃないのか!」
「あら、そうよ。スリルがあるって事に関してはね。――さあ、私たちの番よ!」
晴美と会長に促され、恭史郎はフリーフォールのシートのあっという間に縛り付けられた。
発車のベルの音がして、ゆっくりと上昇し始めた。――これも一緒に止めればよかったじゃないか! 気の利かねえじじぃめ!
恭史郎はそんなことしか考えられず、気がつけばはるか遠くの島が見えそうな最高地点で静止した。
今にもケツの穴から内臓が……!
「じじぃ! 地上に着いたら殺してやる!」
そう叫んだ恭史郎は、落下していく宙空の中で、晴美にだけは見せたくなかったあられもない姿をさらけ出していた……。
おわり
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