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「早くしろ、じじぃ! 殺されてもいいのか!」
「ま……待ってください。そんな突然言われても……」
ベテランの殺し屋が、シワだらけの顔に拳銃を付き付けて睨みつけた。慣れているとはいえ、その迫力は一般人が見たら腰でも抜かしてしまいそうな怖さが漲っている。
初老の管理人は、震えながら少しずつ後ろへ下がって行った。
「簡単なことじゃないか、そのスイッチを切るだけでいいんだ。自分の命より、子供たちの快楽の方が大事だというのか……。グズグズしてると、その頭に穴が空くことになるんだぞ。――さあ、早くしろ!」
「でも、今日は五月五日の子供の日だし、このジェットコースターだけを楽しみに来ている子供だってたくさんいるんですから。それに見て下さい。あんなに行列が……」
窓の外には休日を楽しむ子供たちが、順番を待つのももどかしいように騒ぎ立てていた。
ここは子供の日じゃなくても、日曜祭日ともなれば大人たちだって十分楽しめるようなアトラクションが数多く取り揃えてある、大規模な遊園地の制御室の中の出来事だった。
「子供の快楽なんて関係ない。俺の命の方が大事なんだ」
「どうしてジェットコースターとあなたの命が関係あるんですか。乗ったら爆発でもするというんですか。――もしかしたら、ジェットコースターに乗るのが怖いんじゃ……」
「ばかやろう! つべこべ言わずに早く止めろ!」
殺し屋は詰め寄って、管理人のこめかみに拳銃を突き立てた。本当に引き金を引いてしまいそうな迫真に満ちた顔が、管理人の思考回路を麻痺させた。
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