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「そうじゃないの。私、どうしてもやらなければいけない仕事があるんだ。それをやらなかったら……」  晴美は今にも泣きそうな表情で、恭史郎にすがりつこうとしていた。しかし、晴美がいう仕事を全うしない限り、どうしても飛び込めない事情があるらしい。 「仕事って……。僕に出来ることだったら、何でも言ってくれ。――掃除、洗濯? それとも、アイロンがけなら任せてくれ。家庭科の成績は、いつも(5)だったんだよ、僕! 料理なんか大の得意で……」  他に自慢することがない程、家庭科以外の成績は哀れなものだった。よくぞ高校を卒業することが出来たものだ。 「実は私、ある秘密の組織に入ってて、そこの許しがなかったら、結婚だって……」 「秘密の組織?」 「たとえデートするだけでも、その仕事を終わらせないと出来ないの。――もし、あなたがそれをやってくれたら、私はあなたの……」  晴美は潤ませた目を、恭史郎から逸らさずにいられなかった。 「君のためなら何だってやるよ。お願いだからその仕事、僕にやらせてくれないか」
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