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「じゃあね、ダリア。……今日のキミ、すごく良かったよ。また相手してくれよな。」
「は~い、おやすみなさぁい。」
馴染みの客を送り出すのは、この寒空に大胆にも胸元の開いたワンピースドレスを着た娼婦・ダリアだった。
今日最後の客が、夜の闇をも覆う深い霧の中へと消えてゆく。
「………あ~疲れた。」
客の男の姿が見えなくなったところで、彼女は首もとを押さえかったるそうな声を出した。
「ったく、脂ぎったオヤジ相手すんのも大変なのよ。はぁ~やってらんない。」
先程の猫なで声とはうって変わって、冷めた表情を浮かべて踵を返した。
羽織っていたブランケットを直し、夜のひんやりとした冷気にぶるっと震えた。
ああ…寒い。
思わずそう言葉が漏れた。
「はぁ、それにしても…。今夜はやけに霧が濃いわねぇ…。」
やけに冷えるのはこの霧のせいだろうか。
このセントラルが霧に覆われるのは、よくあることだった。
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