■プロローグ

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 今、俺の目の前で灰褐色の髪をした少女が青い眼を目一杯に輝かせながらしきりに話をしている。  彼女の名前はニコル=アナスタシア。  数日前、俺────烏丸幸人はこの少女と共に稀有な一時を過ごすこととなり、現在は訳有りで同棲を余儀なくされている。  とまぁ……ここだけ掻い摘んで聞けば聞こえが良いし、羨ましいと思う人もいるだろう。  だが先に言っておく。それは間違った見解だ。 「ねぇ、ユッキー。ローリンとファミーマートのフライドチキンならどっちが好き? あ、変なこと聞いてごめんね。そういえばユッキーはファミチキ推しだったよね、ファミチキを枕にして、夜な夜なファミチキで××しちゃうような男の子だもんね。そんなこと私は……」  ニコル。お前には悪いんだが、俺はスパイスをかけたセブンレイブンのフライドチキンが一番好きだ。確かそれはお前も知っている事実だと思うのだがな。  そして俺はファミチキを枕にして寝るほど食い意地は張ってないし、ましてやそれを妄想のタネにいやらしいことをした覚えもない。 「いえ、私だけでなく周知の事実でした!」  そうだね、かつてお前の頭の中で繰り広げられていたその妄想劇は、今お前のお陰で新学期早々周知の事実となったよ。 「それはともかくユッキー、今日の放課後近場のローリンでファミチキを買っていきたいんだけど、付き合ってくれないかな?」 「ニコ、お前は一つ勘違いをしている。ローリンにあるのはえるちきであってファミチキは」 「セブンだっけ!」  違う。人の話を最後まで聞け。ファミチキは歴としたファミーマートのフライドチキンだよ。  と言うか、白昼堂々昼休みの教室の中でそんなことを声高らかに言うのはやめてくれ。馬鹿丸出しだ。  主に俺が恥ずかしい。 「なぁ……ニコ、帰りにファミチキ買ってやるからさ、少し黙ってくれ」 「仕方ないなー、ユッキーのエッチ。ちょっとだけだよ?」  な に が だ。  何がちょっとだけなんだよ。周りに誤解されるような言い回しと、ブラウスのボタンに手をかける動作を今すぐやめろ。  ちょっとどころかモロ出しするつもりだろお前。
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