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「………父さん、僕、首都に行くから」
ラスベルはそれだけ告げると、父親に背を向けた。
そして、黙って身支度を整える息子を、レオナルドは剣を研ぎながら見ている。
「……………」
狭い家の仕事場で、ただ剣を研ぐ音だけが響く。
やがて、ラスベルが支度を整え終わると、彼の方が沈黙に耐えきれず口を開いた。
「ど、どうして、どうして何も言わないんだよ!」
はぁはぁと肩で息をしながら、自然とラスベルの目から、涙がこぼれ落ちていた。
「……言った所で、お前は行くのをやめるのか?」
レオナルドはそれでも手を止めず、そう静かに呟いた。
「そ、そうじゃないだろ!と、父さんは、父さんは僕が憎いんだろ!」
ガンッ!!
ラスベルは壁を勢いよく殴りつけると、狂った様に髪の毛をかきむしる。
「は、ははっ、そうだよ、僕が憎いんだ!か、母さんを救えなかった僕を!わ、解ってるそんな事は!」
ガンッ!ガンッ!!
ラスベルの右手の拳から血が滲む。
それでも彼は、喚きながら壁を殴り続けるばかりだった。
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