ラナ王国 (蒼い髪の美青年編)

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「お母さん、ごめんね、ご、ごめんなさい……」 ガタガタと震えるセーラの髪を優しく撫でながら、ティナは彼女に謝った。 「私……お、お母さんの事、本当に好きだよ?い、今まで育ててくれたし、それは本当に本当。でも、私もそろそろ自由になりたいの」 ティナの言葉が聴こえているのかどうか、それすら解らないまま、セーラはブツブツと床に向かって何かを呟いては震えている。 「……私、ちゃんと帰ってくるから。だからお願い、もう…」 そこまでいいかけて、ティナはゆっくりと目を瞑った。 そして決意を胸に、彼女は立ち上がって母の元を離れる。 「お母さん……元気でね」 寂しそうに笑って話し掛ける娘の最後の言葉に、セーラは何の反応も示さないまま項垂れていた。 (……………) ティナは、もう振り返る事なく、旅立ちの準備に取り掛かった。 やがて彼女は家を出る時、母親に一枚の置き手紙を残している。 その手紙の最後には「今まで本当に有難うございました」という言葉が書かれていた。
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