ラナ王国 (蒼い髪の美青年編)

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セーラの前では、大人しく従順な姿勢を貫いたティナだったが、外に出てる時は別だ。 元々、気の強い彼女は、幾度となく彼と衝突した。 それが煩わしいフェルではあったが、幼馴染みの彼女だけは襲う事をしなかった。 だが、例えティナであっても、自分の邪魔をしたら許さない。 ある時、フェルはティナを呼び出して、彼女を酷くからかった。 「うぜぇんだよ、このブス!!」 暴力こそ振るわないが、集団で取り囲んで執拗に暴言を浴びせたり、水をぶっかけたりした。 本当に子供、彼にしては珍しく餓鬼の発想だった。 気の強いティナは、それでも刃向かってくるだろうと彼は思っていた。 しかし予想を裏切り、彼女は泣いた。 恐らく、フェルの前では初めて泣いてしまった。 その涙をみた時、フェルは何故か、心の内から酷い罪悪感が沸き起こったのを、今でも覚えている。 以来、フェルはティナが泣いた時だけは大人しくしていたが、それでも彼女が居ない時は、何一つ変わりはしなかった。
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