ラナ王国 (蒼い髪の美青年編)

47/59
前へ
/2482ページ
次へ
そして、それは直ぐに訪れる。 ラスベルに敗れてからというもの、フェルは抜け殻の様になっていた。 恐らく惜しくも敗れたとか、卑怯な手を使われたから負けたとかであれば、彼は益々リベンジに燃えていただろう。 しかし一方的、本当に一方的に叩き潰された。 フェルの拳は、一度たりとも掠りすらしなかった。 見た目は女性の様に綺麗な顔をしていて、あの強さは何だ? 生まれて初めての、まさに圧倒的な敗北。 フェルは悔しさを通り越して、自分の弱さに打ちのめされていた。 身体の傷は大した事は無かったが、心の傷は相当深い。 あれほど鋭く刺々しいフェルの瞳は、まるで空洞の様に光を失っていた。 だからこそ、気がつけなかった。 多数の気配、殺気、そして後をつけられている事さえも。
/2482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4399人が本棚に入れています
本棚に追加