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そして、それは直ぐに訪れる。
ラスベルに敗れてからというもの、フェルは抜け殻の様になっていた。
恐らく惜しくも敗れたとか、卑怯な手を使われたから負けたとかであれば、彼は益々リベンジに燃えていただろう。
しかし一方的、本当に一方的に叩き潰された。
フェルの拳は、一度たりとも掠りすらしなかった。
見た目は女性の様に綺麗な顔をしていて、あの強さは何だ?
生まれて初めての、まさに圧倒的な敗北。
フェルは悔しさを通り越して、自分の弱さに打ちのめされていた。
身体の傷は大した事は無かったが、心の傷は相当深い。
あれほど鋭く刺々しいフェルの瞳は、まるで空洞の様に光を失っていた。
だからこそ、気がつけなかった。
多数の気配、殺気、そして後をつけられている事さえも。
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