ラナ王国 (蒼い髪の美青年編)

48/59
前へ
/2482ページ
次へ
ラスベルに敗れてから、丸一日が経った夜。 フェルは当てもなく、一人で歩いていた。 項垂れながらポケットに手を突っ込み、やがて行き止まりに、何気無く顔を上げた。 「……ちっ」 軽く舌打ちしてから自分を嘲笑し、余りの滑稽さに声を殺して笑った。 何故ならフェルは、何時の間にか、自然とラスベル家の前にいたからである。 (………俺もヤキが回ったな、あんなオカマ野郎に……ククッ) もう一度勝負を挑もうか、それとも手段選ばず奴を罠にでも嵌めようか。 そんな事を思っても、フェルは自分が何も出来ない事に気が付いている。 (恐らく、ラスベルには何も通じない。例え親の力を使っても……だ) こんな風に感じたのは、初めての事だった。 そしてフェルは、そのまま彼の家を後にした。 空を見上げ、トボトボと帰路につこうとした矢先。 「負け犬が、空を見上げて何してんだ?」 ガンッ!! 鈍い音が聴こえ、思いきり棍棒で後頭部を殴られたフェルは、そのまま意識を失った。
/2482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4399人が本棚に入れています
本棚に追加