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ラスベルに敗れてから、丸一日が経った夜。
フェルは当てもなく、一人で歩いていた。
項垂れながらポケットに手を突っ込み、やがて行き止まりに、何気無く顔を上げた。
「……ちっ」
軽く舌打ちしてから自分を嘲笑し、余りの滑稽さに声を殺して笑った。
何故ならフェルは、何時の間にか、自然とラスベル家の前にいたからである。
(………俺もヤキが回ったな、あんなオカマ野郎に……ククッ)
もう一度勝負を挑もうか、それとも手段選ばず奴を罠にでも嵌めようか。
そんな事を思っても、フェルは自分が何も出来ない事に気が付いている。
(恐らく、ラスベルには何も通じない。例え親の力を使っても……だ)
こんな風に感じたのは、初めての事だった。
そしてフェルは、そのまま彼の家を後にした。
空を見上げ、トボトボと帰路につこうとした矢先。
「負け犬が、空を見上げて何してんだ?」
ガンッ!!
鈍い音が聴こえ、思いきり棍棒で後頭部を殴られたフェルは、そのまま意識を失った。
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