ラナ王国 (蒼い髪の美青年編)

50/59
前へ
/2482ページ
次へ
「こ、この野郎!」 止めてくれと懇願するのを期待していたのか、どれだけ蹴っても屈しない彼に、皆の顔色が変わってくる。 そして未だに威圧感を放ち続けるフェルに対し、ついに彼等は怯え始めた。 「…………ペッ!」 やがて一区切りがついた時、フェルは口の中の血を、唾と一緒に吐き出した。 「てめぇ等………後で、どうなるか解ってんだろうな?」 その眼光は凄まじく、とても腑抜けたとは思えない。 「くっ……く、くそ!」 そんな台詞を吐きながら、大勢の男達は後退さる。 終いには、フェルを縛った最初の男以外、誰も彼に近寄ろうとしなくなった。 「…………随分と威勢がいいな、この屑野郎が!」 恋人を奪われた男は、フェルの顎を掴んで睨みつける。 「……これで満足か?あんなブスを寝取られただけで………ククッ」 微塵にも動じないフェルの態度とその言葉に、男は激しい怒りを顕にした。 「こ、この野郎!ゆ、許さねぇ!絶対に許さねぇぞ!!」 身動き出来ないフェルを、男は幾度となく殴り続ける。 (……あ~あ、情けねえ……この俺が本当に情けねえ……) 余りに殴られ過ぎたのか、段々と意識が遠退いていく。 そして気を失いそうになった時、男が殴るのを止めた。
/2482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4399人が本棚に入れています
本棚に追加