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「クックッ……ひ、引き返せるだと?」
男は剣をフェルの耳に当て、少しずつそれを裂き始めた。
「……本当に殺す気か。正直驚いたぜ、お前に、そんな度胸があったとはな?」
今から耳を削がれるかも知れないというのに、フェルは哀しい目を男に向ける。
「お前のせいだよ、お前のせいで俺は狂ってしまったんだよ!」
そう怒鳴って男はフェルを見た時、彼の哀しげな瞳に気が付く。
「な、何だよその目は!てめぇは今から耳を削がれ、目玉をえぐられるんだぞ!もっと怯えろ!今直ぐ命乞いをしろ!」
「…………」
男が喚く度に、フェルは今になってティナの言葉を思い出した。
………………
『いつか痛い目みるよ。その時にアンタの味方は誰もいないよ!』
(……確か、アイツに泣きながら、そう言われた気がする)
「クッ……クックックッ」
まさしくその通りだと、フェルは声を殺して笑い出した。
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