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「何が可笑しいんだ!」
男は剣を持たない左手で、再び彼を殴った。
「……いや、何でもないさ」
フェルは目を閉じると、やっと彼女の気持ちに気がついた。
そして、自分の気持ちにも。
(友達…………欲しかったな)
剣で刺殺される前に、もう彼は意識が無くなりそうだった。
そして目の前で錯乱している男を見て、自分のしてきた業の深さを悟る。
「い、今更……気付く……なんてよ」
刺殺されるのが先か、出血多量で死ぬのが先か。
そんな事を考えていた時だった。
「や、止めろっ!」
遠い向こうから、必死に走ってくる男の姿が見えた。
その男は、蒼い髪を揺らして何かを叫んでる。
そして錯乱していた目の前の男を、思いきり殴りつけていた。
「……どうして……お前が……」
遠退く意識の中で、フェルはそう呟いた。
「だ、大丈夫か!しっかりしろ!」
そんなラスベルの声を聞きながら、遂に彼は意識を失った。
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