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「そ、そうじゃねぇ、そうじゃねぇんだよ!」
フェルがそう叫ぶと、二人は首を傾げて見ている。
「何で俺を助けた!俺なんか死んだ方が良いだろ!?なぁ、何でだよ!ティナもだ!俺が、お前を苛めたのは覚えてるだろ!?」
二人を交互に見ながら、フェルはそう喚く。
その瞬間、パンッと乾いた音が響き渡った。
「……し、死んだ方が良いなんて、そんな事、二度と言わないでっ!」
ティナの痛烈な平手打ちが、彼の頬を捉えていた。
「テ、ティナ……」
暫く唖然とするフェルに、ラスベルは優しく話し掛けた。
「フェル……ケンカなんて些細な事だよ。そんなのよりも大切なのは沢山ある、僕とケンカしたのもそう、きっと些細な事だよね?」
ラスベルは、ニコッと笑って彼に右手を差し出した。
「………お、俺は……俺は」
彼が、握手をしようとしているのは解る。
だがフェルは、自分の手が震えて止まらなかった。
「……もぅ、世話が焼けるわね」
彼の気持ちが解っているのか、ティナは優しくフェルの手を、ラスベルの手に重ねてあげた。
「これで仲直りだね、宜しく!」
嬉しそうにそう笑うラスベルと、安心した様に微笑むティナ。
そんな二人を見ながら、フェルは生まれて初めて人前で涙を流して泣いた。
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