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…………
あれから一年が経った。
後から聴いた話だが、あの時、ラスベルが助けたのは偶然ではなかった。
彼は、家の前にきて項垂れていたフェルの姿を見ていたという。
挑まれた事とはいえ、フェルを殴ってしまった事で、ラスベルは彼に謝ろうと外に出た。
その時、既にフェルの姿は無かったが、ラスベルは近くの地面に血痕があるのを見付けた。
ただ事ではないと思い、それから必死に彼を探し回っていたそうだ。
そして漸く彼を見つけ、何とか救いだしたという事である。
しかし、既に瀕死であったフェルを自室に運んだラスベルは、直ぐにティナの元へと走った。
人とは関わりのないラスベルだったが、フェルがティナとだけは仲が良いことくらいは知っている。
勿論、彼がティナを探したのは、治癒魔法が使えると知っていた訳ではない。
ただ単に、自分では手当てや看病が出来ないからだ。
しかし、フェルの幸運は、ラスベルがティナを呼んでくれた事に尽きる。
彼女は、ラスベルの見ている前で、母の言い付け等無視し、必死にフェルを魔法にて治療した。
そのお加減もあって、フェルは一命をとりとめたのである。
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