ラナ王国 (麗しの貴族編)

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そして現在。 ミハエルが卒業して、一年と少し月日が経過した。 この一年でミハエルが欲しい物を手に入れられなかったのは、たった一つだけ。 それはラファリアだ。 彼女だけは、自分の物に出来なかった。 それ以外は全て手にしてきたのに、あの女だけは未だに自分の物にならない。 (あの皇族の女を抱き、自分の妃にして、更に磐石な物にする) そうしなければ、私は先生に嫌われてしまう。 正直、あんな色気の無い女は趣味じゃない。 恐らく生娘だろうが、そんなのは面倒でつまらないだけだ。 だが先生は言った。 ラファリアを必ず妃にして、我が一族と彼女の一族を繋ぐ存在になれと………… 「……まぁいい、泣き叫び、抵抗する女も悪くない。クックッ」 あれから帰宅したミハエルは、ワインを片手に窓の先を見つめる。 そこから遠くに見えるラファリアの家を眺め、彼はそう声を殺して笑っていた。 だが、彼はナティルの真意を理解していない。 先生の底が知れない本心を、私欲にまみれた彼が本当に理解するのは先の話である。
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