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傷を癒せるという能力は、この世界には10人もいないと云われる。
その殆どが遺伝なのだが、彼女の母親はその能力を持たないので、父親がそれを有していた事になる。
だがティナは、父親の顔すら知らない。
彼女が産まれた時、父親は既に母親の側に居なかったからだ。
ただし、彼女は治癒魔法はまだまだ苦手だし、正直な所、簡単な怪我程度しか治せない。
それでも、本来ならE階級など絶対有り得ないのだが、彼女の母親がその力を見せびらかす事を固く禁じていた為、この事は母親を除いて、この二人しか知らなかった。
「ね、良いでしょ?それに約束したじゃない。ずうっと三人は一緒だって!」
ティナは先程とはうって代わり、悲しげな顔を浮かべた。
「テ、ティナ……」
彼女の目には、いつのか間にか涙が溜まっている。
そして勿論、ティナにはよく解っていた。
二人は、自分を心配してるからこそ、反対してるのだという事を。
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