黄色い花

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  巣を逃げて飛び立った弟ホトトギスは、それからずっと今に至るまで、この北国の狭い空で、喉から血を流しながらボットブッツァゲダゾウを繰り返している。 僕が探していた物は、案外浅い場所に埋められていた。 今と同じ季節だったと思う。 タイムカプセルとは言いながら、七夕の短冊気分で書いた手紙を直くんと2人で此処に埋めたのだ。 スーパーのビニール袋で何重にも包んで埋めたそれは、小さい2つの錠剤の瓶である。 ひとつは僕の手紙の瓶で、別のひとつが直くんの瓶。 僕は泥だらけになった手で、呼吸を荒げながら、片方の瓶の蓋を開けた。 覚えている通りなのだけれど、僕はそこに収められた拙い平仮名の手紙を読んで、目の前が暗くなった。 ―――なおくんいなくなれ―― とだけ書いてある。  
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