黄色い花

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  「この辺りの山にね、ホトトギスの親子が暮らしていたらしいんだ。父さん鳥と母さん鳥、それから、最近ようやく飛ぶ事を覚えたお兄ちゃん鳥と、甘えん坊のどう仕様もない弟鳥」 「うん」 どう仕様もないとかは勝手な付け足し。僕は土を掘る作業を続けながら物語を継いだ。 「幸せに暮らしていた家族だけれども、ある日突然、親鳥が帰って来なくなった。兄弟鳥は不安と寂しさの中親鳥を待ったけれども、親鳥達は帰って来ない。次の日の朝には、我が儘な弟鳥は我慢しきれずに、巣から落ちそうな位に暴れて、大声で叫んだのさ。《お腹が空いたよ! お腹が空いたよ》‥‥さ」 スコップ代わりの枯れ枝の先から、固い感触が僕の掌に伝わる。 (やっぱり埋めたのは此処だ) 「兄さん鳥はどうしても優しかった。飛ぶ事は出鱈目にヘタだったけれども、弟鳥の喜ぶ顔が見たかったんだろうね。勇気をふりしぼり、いや違う。無意識に羽ばたいたんだろう。高い場所から夏の空へ」   
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