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1人本を読んでいたら、急に近江くんが教室に入ってきて。
私の席の斜め前に座った近江くん。
くるっと体の向きを私の方に向けて。
からかうような言い方ではなく、純粋に疑問を口にした、と言うような言い方。
「……。」
「笹原?」
「お、お、近江くん…」
声をかけられただけでもびっくりしたと言うのに、名字を呼ばれたことにまたびっくりして。
それと同時に、私の存在を知っていてくれたんだ、と嬉しくもなりました。
「あ。俺の名前、知っててくれたんだ?」
嬉しそうに笑う近江くん。
知っているも何も…近江くんはクラスの人気者。
知らない人なんて、私達のクラスにいるなんて思えないほど。
それに。
“知っててくれたんだ?”なんて。
それは私のセリフですよ?
でも、そんなことをはっきりと口に出来るほどの勇気はなくて。
知っている、と言うことをアピールするために、コクコクと頷く。
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