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「笹原と話したことってなかったから、俺の名前なんて知らないと思ってた。」
ちょっと悪戯っぽい目で笑う近江くん。
その笑顔に、ちょっとドキッとして。
それを誤魔化すように
「ひ、人の名前、覚えるの得意なんです。近江くんも…私の名前、覚えててくれたんですね」
勇気を振り絞ってそう言ってみたら。
返ってきたのは、満面の笑み。
「俺の回りって賑やかなやつらばっかじゃん?男も女も。だからかな…大人しそうな子いるーって気になってたんだ」
“気になっていた”
その言葉に、またまたびっくりして。
あの人気者の近江くんが?
私なんかのことを?
びっくりして固まっていたら、「あ、悪い意味じゃなくて!あのー…えっと…」と、慌て始めた近江くん。
近江くんが慌てる姿は珍しくて、思わずその姿にくすっと笑ってしまって。
「あ、笑った。」なんて言われて。
「ご、ごめんなさっ…」
「や、怒ってるとかじゃなくて!笹原が笑ってるのって、あんま見たことなかったから…」
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