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「どうしたの、それ」
「え?…ああ、ちょっと、ね」
いやいや、ちょっと、じゃないし。
「殴ったの?あいつ」
「んー…まあ…」
いやいや、まあ、じゃないし。
てか、女に手を上げるって、どういうこと。
何様なんだよ。
そもそも最初から気に入らないんだよ、あいつ。
言い様のない怒りに飲み込まれそう…
「そんな顔、しないでよ」
ゆきりんの手が、あやすように、指原の頭を撫でる。
「さっしーにそんな顔、似合わないよ」
「…」
「それに…、煽ったのは、あたしの方だから」
悪いのは、あたし。
そう言ってソファに横になる。
は?何?全部ゆきりんが悪いの?
あいつは悪くないの?
おかしいよ、そんなの。
あいつも…
そして、ゆきりんも。
「さっしー?」
「…」
「なんで、泣いてるの…?」
え?
頬を拭うと、暖かくて湿った感覚。
「…わかんない」
ゆきりんのこと…
自分のことも。
「けど…」
「けど?」
「なんか…悔しい」
「ふふっ、変なの」
そう言って、指原の腕を引っ張るもんだから、簡単にゆきりんの上に乗っかる、指原の身体。
「でも…あたしのために泣いてくれるさっしー、嫌いじゃないよ……うん、好き」
犬みたいに、指原を抱き締めて、頭をくしゃくしゃってする。
「頬、冷やさないと…」
「うん。でも、もうちょっとこのまま…駄目?」
「…いいよ」
あれ、おかしいな。
傷ついたのは、誰?
そして、安心させられてるのは、どっちなんだろう。
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