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んっ。
「あ、ごめん、起こしちゃった?」
目を開けば、目の前には優しい顔をしたさっしーと、頬には冷たいタオル。
あたし、あのまま寝ちゃったんだ…
「おはよ」
「おはよ……あ」
「ん?」
「ご飯…いい匂い…」
「うん、もうすぐ炊けるよ」
どうして?
「ありがと…」
「え?」
「タオルと…ご飯」
「ああ、どういたしまして」
いつもの朝食は簡単なパンが多いんだけど、たまにこうしてご飯を炊いてくれる。
それも決まって、あたしが落ち込んでいる時。
「頬…まだすこし腫れてるね」
「仕事大丈夫かな…」
「昼からだよね?だったら、それまで冷やしておけば……たぶん」
またその困ったような顔。
なのに、なんでこんなに優しいんだろう。
「…あのさ、ゆきりん」
「ん?」
「こんなこと言われるの、嫌かもしれないけど」
「なに?」
「……別れたら?あいつと」
ねえ、どうしてそんなに泣きそうなの?
「それって、干渉?」
「ごめん…」
わかんないけど、困った顔、嫌いじゃない。
「なんてね、別れたよ」
「え?」
「別れてきました」
「そうなの?」
「あたしが煽ったからといって、さすがにあれはやりすぎだし」
「そっか……そうだよね」
ちゃんと安心させる方法だってわかってる。
「さっしーさあ、ほんとあたしのこと好きだよね」
だけど、
…いや、だからこそ、意地悪したくなる。
「…何言ってんの?」
大きくまばたきをして、うかがうようにあたしを見る。
「あれ?違う?」
もっと焦ると思ったのに。
もっと焦らせたかったのに。
「…そうだよ。大好きだよ」
真剣な顔して言うもんだから、不覚にもドキッとしてしまった。
「恋でも、愛でも、ないけど…ね」
寂しげな顔して言うもんだから、胸がキリッと痛んだ。
ああ、こんな表情のさっしーは…あんまり好きじゃない。
「って、そう言ったのは、ゆきりんなんだけど…」
え?なんの話?
そんなこと、言ったっけ?
「なーんて。さ、ご飯食べよ」
何事もなかったかのように動き出すさっしー。
「え、あ、うん」
あたしはそう答えるのが精一杯だった。
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