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いつからか、キミの身体に傷痕が増えていった。
目立つようになった。
相手が変わっても、そう。
そんな時は決まって、あの目をしていた。
寂しげな、いたいけな…
ううん。違う。
からっぽな、表情。
指原には、そこまでして執着する理由がわからなかった。
執着?…いや、彼女は執着なんかしていない。
じゃあ…なんで?
そこまでして、傷つくの?
「もう……やめなよ」
初めてそう言ったのはいつだったっけ。
「なんで?」
「なんか、傷つくために繰り返してるみたい…」
「んー…」
彼女の視線が宙を仰ぐ。
「愛がないから傷つくんじゃないの?」
「はい?」
彼女は、おかしそうに笑った。
「愛があるから、傷つくんだよ」
「え…?」
「ちゃんと愛があるから、失った時に傷つくんじゃないの?」
正論なような気もした。
でも同時に、彼女は傷つくことすらしていないのかもしれない、と思った。
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