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ああ、もう。なにやってんだか… さっきまでのことで、多少ナーバスになってたからって… 今のは、さすがにまずいでしょ? 頭を抱え込んだ瞬間、ドアの向こうで二人が言い争ってる声がした。 …あ、帰った。 そりゃ、帰るか… ドンッ! ドアが壊れるんじゃないかと思った。 驚いた…と同時に、またひとつ、覚醒した。 ……ふう。 ひとつ、大きく深呼吸をした。 ガチャッ… ドアを開けると、見たことのない顔をしたゆきりんが立っていた。 怒ってる? 泣いてる? いや、違う…? 視線が絡まる。 怒ってるの? 泣きたいの? 自分でも、わかんない。 「…なに?」 「なに?今の!」 「は、それはこっちのセリフ」 「普通あんな風に通りすぎる!?」 「じゃあ、どうしてほしかったの?」 「…っ!」 「指原は…てっきり、…指原に見せつけたいんだと思ったよ」 「…そう、だよ」 「でしょ?だからだよ…」 「…でも、違う!」 ドンッと、両肩を押される。 不意な勢いで、身体はよろけながら後退。 「怒ってほしかった?」 「違う!」 「泣いてほしかった?」 「違う!」 答える度、指原の肩を叩きつける。 「怒ってんの?」 「違うってば!」 「じゃあ、……なに?」 ゆきりんのこと見てるはずなのに、今どんな顔をしてるのか、わかんない。 ねえ、指原は今、どんな顔してる? 「さっしーは……あたしのこと好きなんだと思ってた」 ドクン、と心臓がうねった。 全身に血が巡るのがわかる。 けど、肝心の脳みそには届いてくれなくて… 「うん…好き、だよ」 この、"応え"で、あってる? 「…嫌い、あたしは…嫌い!!」 その、"答え"は、あってるの? 「うん、だから付き合うことにした」 「っ……誰と?」 「誰って、リエちゃんに決まってんじゃん」 「…なんで?」 「なんでって、好きだから」 瞬間の表情は、はっきりとわかった。 そんで、自分の気持ち、も。 なんで、なんで、なんで、なんで…… 繰り返される叫びと共に、振り下ろされる手のひら。 指原はただ、それを受け止めるだけだった。
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