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連絡遅くなってごめん、今日は帰れそうにない、
って。なーんだ、せっかくご飯作ったのに。
それにしても ごめん だなんて。おかしいの。
暮らし始めた頃は、もっと早く連絡できなかったの?って時間まで連絡してこなかったのに。
ああ、そっか。一緒に暮らしてるんだもんね。
『干渉しないで』
って言ってきたのはゆきりんの方なのに。
こうも律儀に連絡してくれることが、なんだかくすぐったい。
用意してあったご飯を片付けて、リビングに戻る。
指原の物っていったら、アイドルのDVDとゲームくらいしかなくて、あとはゆきりんの好きなように彩られた部屋なんだけど…
なんだろう。心地いいんだよね。
"彼女"の時は…
同じように"彼女"の物だらけで、それはそれでかわいらしかったんだけど、なんか妙に落ち着かなかっ…
って……うわ、最悪。
思い出すなんて。
いや、ゆきりんと比べるなんて。
でもおかしな話だよね。
"彼女"と暮らすために借りた部屋なのに、今は当たり前のようにゆきりんと暮らしてるんだから。
確かに"彼女"はここにいたはずなのに…
『結局、誰でもよかったんじゃん!』
もういいよ!
って、いつ思い出しても頭が痛くなるフレーズ。
『最初から好きじゃなかったってことでしょ!?』
それは違う、絶対に違うはず。
『優しさと愛情は…違うんだよ…』
ああ、もう、最悪。
どうしてあの時の嫌な感じが、ずっと頭にこべりついて、今もなお剥がれてくれないんだろう。
愛情…か。
わかんないよ。
だって誰も教えてくれないじゃん。
もう嫌だ。寝よう。現実逃避。
ガチャ。
え?
「ただいまー」
微かだけど、ゆきりんの声。
「…ちょ、今日は帰ってこないんじゃな…っ」
…は?なにそれ?
「あれ、まいったなあ、さっしー起きてたんだ」
決まりが悪そうに、苦笑いしながら下を向いた。
ゆきりんの左頬は、うっすら赤く、腫れていた。
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