1.濃紺の幕開け

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「はい。それが私の名にございます」 「僕は、怒っています。本当なら、この戦いは僕がやりたい。けれど、そうも言っていられないし、きっと命さんが許してくれません。だから僕は先に行きます。でも、こんなコト言いたくないけど」  刹那、鍔鳴りだけが響き、祝詞の背後を切り裂いた。反霊石でできた床と壁と天井を。 「その人にひどいことをしたら、僕は貴方を斬ります」  そう言い残し、零也は走っていった。姿が見えなくなってから、祝詞は手を下ろした。 「こうも簡単に人間にあしらわれるとは。本当に、血統とは恐ろしいものですね」 「ふふ、私の恋人もなかなかの物だろう」 「ええ、ですが、まだ姫様には――」    その言葉を言い切る前に、拳を振り抜く。 「及ばない」  案の条、受け止められてしまった。だがそれでいい。戦いはまだ、始まったばかりなのだから。  
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