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必死に呼びかける零也を見て、政基は目を瞬かせた。そしてそのまま近づき、おもむろに零也の頭にげんこつを落とした。
「いっったぁあ!?」
「お、零也だ」
どうやら、偽物の線を疑ったらしい。
「な、なにするの!?」
「お前が変なこと言うからだろ。俺は、ただ約束を果たしに来たんだ。お前とした約束をな」
両の拳をたたき合わせ、今だ状況がつかめないロットに視線を移す。
「ありゃ、敵か」
「え? う、うん。お姉ちゃんの部下だって……」
もう、零也もロットと同じく混乱の極みにいた。政基だけならまだしも、彼はわざわざ響までつれてきているのだ。らしくない。
「じゃあ、あれはもらう」
「へ?」
「あれは、俺が倒す」
「どうして!」
叫ぶ零也に、政基は無言で背を向けた。
「まだわかんねぇか。ちょっとへこむぜ」
「わからないよ! 死んじゃうかもしれないんだよ!」
「その覚悟はとっくにできてんだよ、こっちは。腹くくれ、零也」
ずん、と音をさせて政基が構えをとる。大きく足を開き、重心を安定させた構えだ。
「今更、お前の傲慢さをどうこう言いやしないし、俺はきらいじゃねぇよ。だけどな、お前は言ってくれたんだ。俺に背中を任せるって」
「あ……」
困ったように頭をかいて、政基は続ける。
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