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「お前なら、こいつくらい楽勝だってわかる。だから俺が戦う必要はないのかもしれない。だけど、そうじゃねぇんだよ。任されたんだ。俺は、命を賭けてでもここを通さねぇ。お前がなんと言おうと。もしも、俺を死なせたくないんなら、さっさと終わらせて戻ってこい」
白夜を止め、散葉を助ける。それがどれだけ難しいかくらいは政基にだってわかる。わかった上で、早く帰って来いと彼は言ったのだ。傲慢ならば、それを貫き通せと。自分の命をも救って見せろと。
「あはは。香澄に心配されるわけだね。なんにもわかってなかったんだね。僕は。覚悟が足りないのは、僕だけだったんだ」
ここに来てうじうじと悩んでも、仕方ない。わかったつもりになって、その問題を引きずっていた。けれどもう違う。今度こそ、本当の意味で零也の戦いが始まる。
「零也、これ。お母さんから聞いて、用意しといた私たちの霊力の結晶。使って」
「ありがとう」
それを受け取って、零也も政基がしたように背を向けた。
「……政基くん。もう一度言うね。僕の背中をお願い」
「任せろ」
「僕が必ず君を助けるよ」
「どうだかな。追いついて、手伝ってやるよ」
「その頃には終わってると思うよ?」
「言ったな?」
お互い、顔も見ず同時に笑う。
「気張れよ、相棒」
「任せて、親友」
それが最後だった。
零也は走りだす。迷いはない。
今度こそ。ここが零也の本当のスタート。
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