2.約束だから。信じてるから。

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簡易神降ろしの高等応用。  敵の霊力に同化し、霊力による攻撃を無効化する技能。  霧散し、大気に満ちた霊力は零也にとって単なる燃料となる。 「いくよ、香澄」 『いつでもどうぞ、馬鹿御主人』  吸い上げた膨大な霊力を、そのまま香澄に注ぎ込む。力を数百分の一に落としてなお、酒呑童子のもつ宝剣を断ち切るその刃を全力で抜き放つために。 「――風断之魂! 」  透き通るような金属音。同時に放たれたのはあまりにも巨大な真空の刃。クレバスをさらに広げて空間を埋め尽くす。伝説級の妖怪すらも粉微塵にしてしまう。  わずかに、空間が避けて本来の部屋が姿を見せる。真白で小さな部屋に机と椅子が――。 「よそ見をしている暇はないぞ」  気付くと、零也は平らな地面に立っていた。先ほどのクレバスは既にない。  目の前には龍族最強が佇んでいる。散葉がいない今、あの時と同じ方法では勝てない。 「わかってます。真さん。あなたを、斬ります」 「ああ、来るがいい」  あらゆるものを反射する鏡の鱗。本当の神話時代に星神が作り上げた究極の一つ。だが、星神ともう一人が作り上げた究極が零也の手にはある。  始まりは唐突だった。  終わってしまった神話と、まだ始まってもいない神話がぶつかる。
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