2.約束だから。信じてるから。

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         ☆    ある、娘が居た。  山奥にある小さな村の長の娘。  あらゆることは指示なしには許されず、縛りに縛られた生活を送っていた。  なにも知らず――気付かぬ振りをして。  疑いを持たず――ただ、偽りの希望を信じて。  けれどそれで良かった。  そうして自分の生は終わっていくのだと思っていた。  幸せではなかったけれど、苦しくはなかった。  持たぬがゆえに、失わなくてよかった。    けれど、その生活は唐突に終わりを告げた。  瑠璃波の使者を名乗る――日溜りの名を持つ青年によって。  それは、ある意味では彼女にとっての不幸の始まりだった。  けれど、幾年月が過ぎようとも彼女がその日を呪う日は来ない。  その別れすら、不幸すら、彼女にとってはかけがえのない――
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