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全て、手遅れだった。
その幸せは、手遅れだったから生まれたものだった。
咲夜と名付けられたその少女が生まれた時から、彼女が家族となった時にはもう決まっていた終わり。
それは、月のない夜のことだった。
「星羅はまだ帰っていないわけ?」
「一朝一夕でできることじゃないわよ。この世の仕組みを変えるんだもの」
いつもと同じ。火を輪になって囲んでいた。星羅の居ない団欒は少し、活気に欠けていた。一日ではないのだ。今日でもう一週間になる。
「もうじきだよ。大丈夫。星羅なら、きっと」
「星羅様が帰ってきたらお祝いをしたいですねぇ」
鈴のその言葉に珍しく、金華之姫も頷いた。
「たまには良い事言うじゃない。宴か。いいんじゃないの?」
「なら準備しなくちゃね」
そう言って立ち上がろうとした華音は何気なく、咲夜の手を引いていた。しかし、彼女は立ち上がってはくれない。
「どうしたの、咲夜。準備がいやなの?」
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