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バチッと音がして、かすかに見えていた障壁が消え失せる。
術や霊力などを、発動したり高めたりする前に戻す。それが零也の固有能力だ。しかし、ひどく燃費が悪く、一度の使用で全体の零也の霊力の三分の一を使ってしまう。ピーキーで使いどころが難しい能力だ。
『き、君はなにを考えているんだ! 今、温存するといったばかりだろう!』
握ったままの手から、悲鳴のような念を送る命。
『まぁまぁ。僕にも考えがあるんですよ。もともと、実戦向きじゃないですし、使う気はほとんどないんです。それに、傍目にはただ無効化してるように見えるはずです。これで警戒してくれれば大技は控えるでしょう』
「む……」
『使ったんだから、もう遅いです。まだ城の前ですからうちのバカ主人は回復してますよ。せっかく破ったんだからさっさと進んだらどうですか』
香澄の言うとおり零也は辺りから手当たり次第に霊力を吸っていた。さすがに丸々回復しているとは言い難いが、障壁を破ったことを考えれば上々だろう。
「仕方ない。手を離すんじゃないぞ!」
言って、命は飛び上がる。離すな、と言いながらしっかりと手は零也の腰に回っていた。稲光と化して、一気に城門を突破。その勢いで入城し、足を下ろした。
城の壁は全面が加工された鉱石で出来ていて、そこに温かみはなかった。
材質を確かめるように床に手を触れ、命はため息をつく。
「案の定、ここは反霊石で出来ているな」
単に術の威力を殺す鉱石だが、こと零也に限ると事情が違う。
放っておけば自然から霊力を得、かつ簡易版の神降ろしを基本に据えて戦う零也にとってはまさにカウンターなのだ。
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