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ひとしきり大声で言い切って、鈴は大粒の涙を落とした。
「似合わないこと、言わないでください」
「……ごめん。でもどうしたらいいんだ。何が起こってるかさえわかれば……」
元凶と思わしき黒い月。そこへ向かって吹く風は強くなるばかりだ。どうしてあれが生まれたのかも、咲夜があそこまでの過剰反応を起こしたのかもわからない。
「いやだ、いやだ」
「え?」
目を閉じて呟いた鈴に視線が集まる。
「そこへは行きたくない。怖い。ひとりは嫌だ。ここに居たい。みんなと一緒がいい……。咲夜ちゃんの周りの木達がそう言ってるのが聞こえるって……」
植物を使役する鈴には木の声が聞こえる。だが、それを聞いてさえ状況ははっきりしない。
「この事態はそういうことか」
疲れきった声でそう呟いたのは、姿を消していた星羅だった。
「せ、星羅様!」
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