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雷鳴など、そこにはなかった。雷の発生点はそんなに生やさしくはない。もはや爆発音だ。
「ゴロゴロとやかましい!」
「おや、貴女も同じ力を使うのでは」
「一緒にするな!」
乱暴に振るった雷撃。だが、それは奇しくも力の差を知らしめられるだけの結果となった。
放たれた電撃は祝詞の向けた手に当たり、吸収されたのだ。
「なるほど。私とは確かに質が違う。繊細な雷ですね」
ち、自分でもらしくないと思う舌打ちをして、けれど冷静に分析する。
ここまで受けた電撃であれば、耐えられる。
「零也。手を」
すぐに零也が私の手を握った。会話をせずともこれで意思の疎通ができるのだから便利だ。
『次の一撃のあと、ここを駆け抜けろ』
『でも!』
『往生際が悪いぞ。私はそのために来たと言ったろう。私を置いていけないのであれば、散葉を救うことなどできないと思え』
会話はそこまでだった。手を離し、私は準備を始める。霊力を腕に集め――。
「恐ろしい才能ですね。こちら側の世界に足を踏み入れて一年程だと伺いましたが、まさかここまでスムーズに霊力の交換を行えるとは。ですが、姫様には遠く及びません」
ぱり、と。
完全に私の反射速度を超えていた。コンマ一秒、反応が遅れた。だが祝詞の速度を鑑みればその遅れは致命的。
その指先は私の首筋に添えられていた。鋭い、刃物のような爪だ。
けれど。
「本当に、恐ろしいまでの才能です」
同じように香澄の切っ先もまた、祝詞の首筋に添えられていた。
「命さん。次は、見切れますか」
聞いている。ここを任せても本当に平気かと。
私が命を賭けてすら、遠く及ばないかもしれない敵。それを相手にできるかと、私の愛する人は聞いている。
そんなもの、答えは決まっている。
「任せてくれ」
零也は刀を納め、祝詞の横を歩いて通り過ぎた。数歩進んだ先で立ち止まり、振り返らずに言葉を紡いだ。
「祝詞さん、でしたよね」
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