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「私、神代 伊吹姫は雛形 漣のことが大好きです」
いつも通りの学校からの帰り道。
並んで歩いていた伊吹姫が急に前に回り込み、満面の笑みを浮かべながらの突然の告白。
「・・・え・・・?」
あまりにも突然すぎて、聞き返すことしかできなかった。
「え・・・?じゃないよ~私の一世一代の告白を聞いてなかったの?」
表情が一変し、頬を膨らませながら不機嫌な顔に変わった伊吹姫が俺のことをジッと見つめる。
「あ、いや、あまりにも唐突だったから・・・」
俺は幼馴染の告白に驚いていた。
いつも通りの帰り道。
いつも通りの風景。
次の交差点を曲がれば家に着く。
そんな日常の中での突然の告白。
驚かない方がおかしい。
「返事は今すぐじゃなくていいよ。忘れないうちに返事くれれば」
また満面の笑みに変わった伊吹姫は、後ろ向きに歩き出した。
「忘れないうちって・・・今じゃなくていいのか?」
伊吹姫は首を横に振った。
「どうせ、毎日顔を合わせるんだし、急がないよ」
伊吹姫とは家が隣同士。
たしかに、毎日顔を合わせるがそれでいいのか・・・?
キキーッ
その時だった。
曲がる交差点に伊吹姫が差し掛かった瞬間、突然鳴り響いたブレーキ音。
ドンッ
次の瞬間には、伊吹姫の体が宙を舞っていた。
「え・・・?」
突然の出来事に体が硬直してしまい、一部始終を傍観することしかできなかった。
硬直が解けた時、すでに伊吹姫は道路に転がっていた。
「伊吹姫!!」
ガバッ
「ハァッ・・・ハァッ・・・また、この夢か・・・」
何年もの間、繰り返し見続ける“あの日”の光景。
「・・・くそっ・・・」
起こる事が分かっている事故。
変わらない結末。
そして、同じ場面で必ず起きる。
「夢なんだから、違う結末が見れてもバチは当たらないんじゃないのか・・?」
またベットに寝ころびながら、誰にとなく独り言を呟く。
「最近、見てないと思ってたのに何で・・・」
スマホで時刻を確認して、俺は納得した。
「・・・あぁ・・・今日、同窓会か・・・」
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