2、雷鳴と雷光

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私は聞いてみた。 《どうして手話が出来るの?》 何の前触れもなく、私の目の前に現れたペガサスは、少しだけ笑って言った。 「軽くしか出来ねぇよ」 《何か紙はあるか?》 あっ、困った時のお助けノート。 それを広げると、書いてくれた。 「昔、近親に聴覚障害者がいたから」 私は、見上げてきれいな瞳を見つめた。 《少しだけ出来る》 …うん。 どうしよう、むちゃくちゃカッコいいんだけど。 凄く、今ドキドキしてるんだけど。 ……。 私はノートに書いた。 「京都人?観光者?」 「いいや」 《仕事だ》 仕事? 私はノートに書く。 「いつまで京都に居るの?何の仕事してるの?」 ペガサスはペンを渡すと書き込む。 「一週間ホテル暮らし。イベント会社の研修」 《イベント会社?》 私が聞き返すと、 「そうだ。だから、もうしばらくは」 《ここに居る。おまえは?》 その問い掛けに私は嘘を付いた。 《明日帰る…》 「泊まりで一人か。すげぇな、おまえ」 だから、今夜は帰らないでホテルに泊まる。 私はペンを握り、夢中で書く。 「どこのホテルに泊まってるの?」 ペガサスは書き込む。 「◯◯ビジネスホテル。すぐ近い。コンビニで買い出し。だから外を歩いてた」 《私も同じ》 ホテルの名前に指を差して、 《同じ》 と、完全に嘘っぱち。 どうしよう、そこのホテル。 今から泊まれるかな。
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